・テストや課題、就活、サークルなどを頑張った後に、急に何もしたくなくなることがある
・「燃え尽きたような感覚」は、単純な怠けや一時的なやる気の低下だけでは説明できない場合がある
・目標を達成した後に、「次に何を頑張ればいいかわからない」と感じることもある
・無理に以前のペースへ戻そうとするより、まず今の自分が何に疲れているのかを整理することが大切
夏休みが終わったのに、なぜか何もやる気が出ない
夏休みも終わったし、そろそろ後期も頑張らないと。そう思っているのに、なぜか身体が動かない。授業には行くけれど、帰ってきたら何もしたくない。課題を開いても集中できない。友達から遊びに誘われても、以前ほど「行きたい」と思わない。
夏休みに十分休んだはずなのに、「なぜまだ疲れているんだろう」と感じることはありませんか?
特に前期、授業やテスト、レポート、アルバイト、サークルなどをかなり頑張っていた人ほど、一区切りついた後に、急に力が抜けたように感じることがあります。
大学3年生なら、そこにインターンシップや就活が加わっていた人もいるでしょう。夏のインターンシップに向けてエントリーシートを書き、面接を受け、大学の課題もこなし、アルバイトも続ける。夏休みに入ってようやく少し落ち着いたと思ったら、今度は後期が始まる。
「もう頑張りたくない」
そんな気持ちが出てきても不思議ではありません。
「やる気がない」と「疲れて動けない」は違う
何もしたくないとき、多くの人は「自分のやる気の問題」と考えます。「最近だらけている」「夏休みで怠け癖がついた」「もっとちゃんとしなきゃ」と、自分を動かそうとします。
でも、同じ「動けない」でも状態はさまざまです。
そもそもやりたいと思っていない場合もあれば、やりたい気持ちはあるのに、疲れて動けない場合もあります。
例えば、「後期は資格の勉強をしたい」と思っている。でも、机に向かう気力がない。「友達と会いたい」と思っているのに、予定を入れるだけで疲れそうに感じる。
そんなときは、「やる気を出す方法」だけを探すより、自分がどのくらい疲れているのか、睡眠や休息が足りているか、日常生活にどの程度影響が出ているかを考えてみることも大切です。
燃え尽き症候群(バーンアウト)とは?
燃え尽き症候群は「バーンアウト」とも呼ばれます。WHOの国際疾病分類であるICD-11では、適切に対処されていない慢性的な職場のストレスに関連する「職業上の現象」と位置づけられており、病気として分類されているものではありません。また、WHOは、この用語を職業以外の生活領域へ広く当てはめるものではないとしています。
そのため、学生が「最近やる気が出ない」と感じたときに、すぐ「自分は燃え尽き症候群だ」と自己判断するのは適切ではありません。
一方で、学生でも勉強や課外活動などで長期間強い負担が続いた結果、「燃え尽きたように感じる」ことはあります。
ずっと目標に向かって頑張っていたのに、ある日急に動けなくなる。以前は頑張れていたことに気持ちが向かない。「もうどうでもいい」と感じる。
こうした状態を、「怠けている」の一言だけで片づけないことが大切です。ただし、その背景には疲労だけでなく、睡眠の問題、身体の不調、抑うつ状態などが関係している可能性もあります。「燃え尽き」という言葉だけで原因を決めず、自分の状態を幅広く見る必要があります。
頑張っている最中より「終わった後」に疲れを感じることもある
忙しい時期は、自分の疲れに気づきにくいことがあります。
「来週までにレポートを出さなきゃ」
「テストが終わるまで頑張ろう」
「このイベントが終われば休める」
目の前にやることがあるため、とにかくそこまで進み続けます。
ところが、それが終わった瞬間に気が抜ける。
試験期間が終わった翌日、何もしたくなくなる。サークルの大きなイベントが終わったら、大学へ行く気までなくなる。インターンシップの選考が一区切りついたら、急に疲れを感じる。
「終わったのだから、すぐ元気になるはず」と思うかもしれませんが、張りつめていた状態が緩んだタイミングで、それまで意識していなかった疲れに気づくこともあります。
「達成したのにうれしくない」と感じることもある
頑張っていた目標を達成したのに、思ったほど達成感がないこともあります。
単位を取った。資格に合格した。サークルの大会が終わった。インターンシップに参加できた。
本当なら「やった!」と思うはずなのに、なぜか気持ちは空っぽ。
目標に向かっている間は、「これが終わったら満足できる」と思っていたかもしれません。しかし、目標を達成した瞬間、それまで行動の方向を決めていた目標もなくなるため、「次に何をすればいいんだろう」と感じることがあります。
頑張ることが日常になっていた人ほど、頑張らなくてよい状態になったときに、逆に落ち着かなくなることもあります。
ただし、達成感がない状態や、それまで楽しめていたことを楽しめない状態が長く続いている場合は、単なる目標達成後の反応と決めつけないことも大切です。
大学生は「終わり」が見えにくい
大学生活は、意外と休むタイミングがわかりにくいものです。
授業が終わればテストがある。テストが終われば夏休み。でも、夏休みにはアルバイトやインターンシップがある。後期が始まれば授業があり、大学3年生なら就活も本格的に気になってくる。
「ここまで頑張れば全部終わり」という地点が、なかなかありません。
さらにSNSを見ると、休んでいる間にも「資格を取りました」「インターンシップに参加しました」「留学しています」といった、ほかの学生の活動が目に入ります。
すると、休んでいるだけなのに「自分だけ何もしていない」という焦りを感じることがあります。
「休んでいた」と「回復していた」は同じではない
夏休みに授業がなかったから、「自分は十分休んだはず」と思っている人もいるでしょう。
でも、予定がないことと、心身が回復できていることは同じとは限りません。
夜遅くまでスマホを見る。生活リズムが大きく変わる。アルバイトをたくさん入れる。友達との予定を詰め込む。就活について毎日調べる。
授業がなくても、頭や身体を休ませる時間が少なかったことはあります。
「夏休みだったのに疲れている」と感じたら、休みの日数だけではなく、睡眠を取れていたか、予定を入れずに過ごせる時間があったか、自分なりに力を抜ける時間があったかを振り返ってみてください。
なお、スマホを見ることや友達と過ごすことが、必ずしも休息にならないわけではありません。何をすると休めるかは人によって異なります。大切なのは、その過ごし方の後に自分が少し楽になったか、それともさらに疲れたかを確かめることです。
「前の自分に戻ろう」とするとさらに苦しくなる
燃え尽きたように感じているときに、よくあるのが「前はもっとできていたのに」という比較です。
前期は毎日大学へ行けた。課題も早めに終わらせていた。アルバイトもしていた。友達とも遊んでいた。
だから、「前にできたんだから、今もできるはず」と思う。
でも、前期の自分と今の自分では、疲労や環境が違います。
以前の100%を基準にすると、今できていることがあっても、「以前よりできていない部分」ばかりが目につきやすくなります。
今必要なのは、以前の状態へ一気に戻ることではなく、「今の自分なら、何をどのくらいできそうか」を考えることかもしれません。
まず「何に疲れているのか」を分けてみる
「疲れた」と感じても、疲れの原因は一つとは限りません。
授業や課題に疲れている。人と会うことに疲れている。アルバイトに疲れている。就活を考えることに疲れている。予定が多すぎる。何かを頑張り続けること自体に疲れている。睡眠不足や身体の不調がある。
そこで一度、「何がなくなったら、少し楽になりそう?」と考えてみてください。
「アルバイトの予定が少ない週なら楽かも」と思うなら、アルバイトの負担が大きいのかもしれません。「誰にも会わなくてよい日がほしい」なら、人と関わることで疲れているのかもしれません。
疲れの原因が少しわかると、どのように休むか、何を調整するかも考えやすくなります。
ただし、自分だけでは減らせない予定もあります。授業や仕事などの調整が必要な場合は、無断で休んだり一人で抱え込んだりせず、教員、職場の担当者、家族などに相談してみてください。
回復するときまで「成果」を求めなくていい
疲れているときにも、「せっかく休むなら有意義に過ごしたい」と考えることがあります。
本を読もう。運動しよう。部屋を片づけよう。資格の勉強をしよう。
でも、それでは休む時間まで「何かを達成する時間」になってしまいます。
何もせずにゆっくりする。昼寝をする。好きな動画を見る。散歩する。好きなものを食べる。
そこにわかりやすい成果がなくても構いません。休むことまで上手にやろうとしなくてよいのです。
ただし、昼寝が長くなって夜に眠れなくなるなど、休み方によって生活リズムがさらに崩れることもあります。何をした後に少し回復したと感じるか、夜の睡眠に影響していないかを見ながら、自分に合った休み方を探してみてください。
小さく「やりたい」を取り戻してみる
少し余裕が出てきたら、「やらなければならないこと」ではなく、「少しやってみたいこと」を一つ探してみてください。
大学帰りに気になっていたカフェへ行く。読みたかった漫画を読む。久しぶりに友達とご飯を食べる。近所を散歩する。
大きな目標を作る必要はありません。
燃え尽きたように感じているときは、「以前のように頑張れる自分を取り戻す」ことを急ぐよりも、自分が少し興味を持てることや、心地よいと感じることを確かめていくほうがよい場合があります。
ただし、「やりたいことを見つけなければ」と新たな課題にする必要もありません。何も思いつかないときは、まず休息や相談を優先して構いません。
休んでも戻らないときは一人で抱え込まない
「何もしたくない」という状態が長く続いている場合や、大学生活に大きな影響が出ている場合は、「燃え尽きだから休めば大丈夫」と自己判断し続けないことも大切です。
眠れない、または眠りすぎて起きられない。食欲が大きく変わった。授業へほとんど行けない。以前楽しめていたことを楽しめない。気分の落ち込みや強い不安が続く。自分を強く責めてしまう。
こうした日常生活への影響が続いているなら、大学の学生相談室や保健センター、医療機関など、専門的な相談先を利用することも選択肢になります。
これらは、「もっと大変になってから相談する場所」ではありません。自分では状態や原因を整理できない段階で話してみることにも意味があります。
もし「消えてしまいたい」「死にたい」と感じるほどつらい場合や、自分を傷つけてしまいそうな場合は、一人で抱えず、身近な人や大学の相談窓口、医療機関などへ早めに助けを求めてください。差し迫った危険がある場合は、ためらわずに救急へ連絡してください。
小さな一歩から始めてみましょう
頑張った後に何もしたくなくなったとき、最初にやることは「もう一度頑張ること」でなくても構いません。
まずスマホのメモに、「今、一番疲れていることは何?」と書いてみてください。
授業。就活。アルバイト。友達。予定の多さ。睡眠不足。何も思いつかなければ、「わからない」でも大丈夫です。
そして、もう一つ、「今、一つ調整できるとしたら何?」と考えてみます。
可能であればアルバイトの予定を相談する。予定を入れない夜を一日作る。空きコマは勉強ではなく休息に使う。SNSを見ない時間を短く作る。身近な人に今の状態を話してみる。
何かを追加するのではなく、まず負担を一つ減らしたり、誰かと分けたりする方法を考えてみる。
大学生になると、「何を頑張るか」を考える機会はたくさんあります。でも、「何を今は頑張らないか」を決めることも、自分の生活を整えるためには大切です。
後期が始まったからといって、前期の自分へ一気に戻らなくても構いません。今の自分の疲れや生活への影響を確認しながら、必要であれば誰かの力も借りて、少しずつ生活を作り直していく。
そしてまた、「これなら少しやってみたい」と思えるものが出てきたら、そこから始めてみてください。
頑張るためだけに休むのではなく、まず自分の心身を回復させるために休む。
後期が始まる時期は、もう一度走り始めることだけではなく、自分がどのくらい疲れているのかに気づくタイミングにしてもよいのかもしれません。

MeWithを運営するMinds1020Lab(マインズテントゥエンティラボ)は、「なんとなく生きづらい」「心がモヤモヤする」と感じる10代・20代に寄り添いながら、心のはたらきについて研究しているチームです。
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心理学監修:横浜市立大学医学部 客員教授/中央大学文学部 教授 髙瀨堅吉
学生生活や人間関係など、若者が抱える悩みについて、心理学の視点から記事内容を監修しています。


