・就活では「やりたい仕事」だけでなく、給料、休日、勤務地、働き方などの条件から会社を選んでもいい
・仕事に求めるものは人によって異なり、全員が「仕事を人生の中心にしたい」と考えるとは限らない
・条件の数字だけを見るのではなく、「なぜその条件が自分にとって大切なのか」まで考えると、企業選びの軸が見えやすくなる
・就活の軸は立派な言葉で作るものではなく、「自分がどのような生活を送りたいか」から考えることもできる
「給料と休みで会社を選びたい」ってダメなの?
就活を始めると、「どんな仕事がしたい?」「将来どんなことを実現したい?」「企業選びの軸は?」と聞かれる機会が増えてきます。
でも正直、「特にやりたい仕事がない」と思っている大学生もいるのではないでしょうか。
会社を調べるとき、最初に見てしまうのは仕事内容より給料。年間休日は何日あるのか。土日休みなのか。転勤はあるのか。希望する地域で働けるのか。リモートワークはできるのか。
そんな自分を見て、「就活では、もっと仕事内容や企業理念を重視しないといけないのかな」「条件で会社を選ぶのはよくないのかな」と不安になることがあります。
でも、仕事は毎日の生活と深く関わるものです。だから、働く条件を大切にすること自体がおかしいわけではありません。
仕事は「仕事内容」だけでできているわけではない
会社を選ぶというと、「何の仕事をするか」に目が向きやすくなります。
広告を作る。商品を企画する。営業をする。システムを作る。人を支援する。
もちろん、仕事内容は重要です。
でも実際に働き始めれば、それ以外の要素も毎日の生活に大きく影響します。
何時に起きるのか。通勤に何分かかるのか。何時ごろ帰れるのか。休日はどのくらいあるのか。どのくらいの収入があるのか。転勤があるのか。どのような人たちと、どのような体制で働くのか。
仕事内容に興味があっても、労働時間や勤務地などが自分の生活と合わなければ、働き続けることが苦しくなる場合があります。
反対に、「子どもの頃から夢だった仕事」ではなくても、仕事内容や働き方が自分に合い、仕事を続ける中でおもしろさや意味を見つける人もいます。
「仕事に何を求めるか」は人によって違う
大学生の就活では、「仕事を通して成長したい」「社会に貢献したい」といった言葉をよく目にします。
それらを大切にする人もいるでしょう。
でも、全員が仕事を人生の中心に置きたいわけではありません。
仕事以外の趣味を大切にしたい。家族との時間を持ちたい。旅行へ行きたい。好きな場所で暮らしたい。安定した収入を得て、安心して生活したい。
そう考えることも、一つの価値観です。
仕事だけを切り離して考えるのではなく、「仕事を含めて、どのような生活を送りたいのか」と考えてみると、自分に合う会社の条件が見えてくることがあります。
「自分にとって大切なこと」を知ることが選択を助ける
選択肢が多いと、人は迷いやすくなることがあります。
就活では、非常に多くの会社があります。その中から「自分に合う会社を探してください」と言われても、簡単ではありません。
そこで必要になるのが、自分なりの基準です。
例えば、「年間休日120日以上」という条件があったとします。
なぜ120日以上を希望するのでしょうか。
「なんとなく多いほうがいい」で終わらせず、理由をもう一段考えてみます。
旅行が好きだから、ある程度まとまった休みを取りたい。休日に趣味を続けたい。一人で休む時間が必要。家族との時間を大切にしたい。
すると、「休日が多い会社」という条件の奥に、「仕事以外の時間も大切にしたい」という自分の価値観が見えてきます。
条件を見ることが問題なのではなく、その条件を自分がなぜ求めているのかを知ることが大切です。
なお、「年間休日」は、会社があらかじめ定めた休日の年間合計であり、年次有給休暇とは別のものです。数字だけでなく、休日の曜日や勤務形態、有給休暇の取得実績なども確認しましょう。
「給料が高い会社がいい」の理由を考えてみる
給料を重視すると、「お金だけで会社を選んでいるみたい」と感じるかもしれません。
でも、収入は生活に関わる重要な条件です。
大切なのは、「いくら欲しい?」だけでなく、「その収入でどのような生活を送りたい?」まで考えることです。
一人暮らしをしたい。奨学金を返したい。旅行へ行きたい。趣味にお金を使いたい。将来のために貯金したい。
理由によって、必要な収入も変わってきます。
「とにかく高ければ高いほどよい」ではなく、自分が送りたい生活から必要な条件を考えてみると、企業を見る基準が少し具体的になります。
求人情報を見るときは、表示されている月給の金額だけでなく、基本給、各種手当、固定残業代の有無と対象時間、賞与、昇給、試用期間中の条件なども確認しましょう。また、求人票などに記載される金額は、一般に税金や社会保険料などが差し引かれる前の額です。実際に自由に使える金額とは異なります。
初任給が高く見えても、固定残業代や手当が含まれている場合があります。金額の大きさだけではなく、その内訳を見ることが大切です。
勤務地を重視することも就活の軸になる
「勤務地で会社を決めるなんて」と思う人もいるかもしれません。
でも、どこで暮らすかは毎日の生活に大きく関わります。
東京で暮らしてみたい。地元から離れたくない。実家の近くにいたい。自然のある地域で暮らしたい。将来は海外で働いてみたい。
仕事を選ぶことと、暮らす場所を選ぶことは、切り離せない場合があります。
特に転勤の可能性がある会社では、自分がそれを受け入れられるかを考えておくことも重要です。
「仕事内容が魅力的なら、勤務地にはこだわらない」と思える人もいれば、「暮らす地域は譲りたくない」という人もいます。
どちらが正しいということではありません。
ただし、求人情報に書かれた「勤務地」が初任地だけを指すのか、その後も勤務地が限定されるのかは確認が必要です。「転勤なし」と書かれていても、事業所内の異動や職種変更の可能性など、具体的な範囲を確かめておきましょう。
「休みが多い」は実際に何を意味している?
求人情報を見るとき、「年間休日○日」という数字だけを比較してしまうことがあります。
でも、本当に知りたいのは数字そのものではないかもしれません。
土日に休みたいのか。平日休みでも構わないのか。長期休暇を取りたいのか。有給休暇を利用しやすい環境がよいのか。残業が少ないことのほうが重要なのか。
例えば、年間休日が同じでも、完全週休2日制なのか、シフト制なのか、繁忙期と閑散期で休み方が変わるのかなど、実際の働き方は会社によって異なります。
また、「週休2日制」と「完全週休2日制」は意味が異なる場合があります。休日数だけでなく、休日の取り方や勤務カレンダーも確認しておきましょう。
年次有給休暇についても、付与日数だけでなく、実際の取得状況を見ると、休み方を考える材料になります。ただし、会社全体の平均値が、そのまま自分の配属先に当てはまるとは限りません。
「年間休日120日以上」という条件だけではなく、「自分はどのような休み方をしたい?」まで考えると、自分に必要な働き方が見えてきます。
リモートワークの「制度」と「実際に使えるか」は分けて考える
リモートワークを重視する人もいるでしょう。通勤時間を減らしたい、場所の自由度を持ちたい、落ち着いた環境で働きたいなど、理由はさまざまです。
ただし、「リモートワーク制度あり」と書かれていても、全社員がいつでも利用できるとは限りません。
職種や配属先によって利用できない。入社直後は出社が必要。週に利用できる回数が決まっている。上司の承認が必要。制度はあるものの、実際の利用者は少ない。
そのような場合もあります。
リモートワークを重要な条件にするなら、「制度があるか」だけでなく、「どの職種が、どのくらい利用しているか」まで確認してみましょう。
条件だけで会社を絞りすぎると見えなくなるものもある
ここまで「条件から会社を選んでもよい」と書いてきましたが、給料や休日だけで会社を決めればよいということではありません。
同じ給与、同じ休日数でも、仕事内容、労働時間、教育体制、評価制度、キャリアの選択肢、職場でのコミュニケーションなどは違います。
そのため、条件は「会社を知る入口」として使う方法があります。
「年間休日120日以上」「勤務地は希望する地域」「給与はこの程度」という条件で候補を探したあと、「この会社では実際に何をするのだろう」「どのように評価されるのだろう」と仕事内容や制度を見てみる。
最初から仕事内容に強い興味がなくても、調べていくうちに「これは少しおもしろそう」と感じる仕事が見つかることがあります。
採用ページや説明会だけでなく、求人票、企業の公表資料、大学のキャリアセンター、就職情報を提供する公的なサイトなど、複数の情報源を使って確認することも大切です。
「絶対に必要」と「あったらうれしい」を分ける
企業を探していると、条件がどんどん増えることがあります。
給料は高いほうがいい。年間休日は多いほうがいい。残業は少ないほうがいい。リモートワークができる。転勤なし。福利厚生が充実している。会社も有名。仕事内容もおもしろい。
すべてを満たす会社を探し始めると、選択肢が極端に少なくなることがあります。
そこで、条件を3つに分けてみます。
「譲れない」
「できれば満たしたい」
「なくても受け入れられる」
例えば、勤務地は譲れない。休日数はできれば多いほうがいい。リモートワークはなくても受け入れられる。
こうすると、企業を比較しやすくなります。
ただし、「譲れない条件」を最初から固定する必要はありません。企業や仕事について知る中で、条件の優先順位が変わっても構いません。
友達と「いい会社」の基準が違ってもいい
就活中は、友達と会社について話すことも増えます。
「絶対に大手がいい」
「給料が高いところがいい」
「ベンチャーのほうがおもしろそう」
「私は地元で働きたい」
いろいろな価値観があります。
友達から「その会社、給料が低くない?」と言われて、急に不安になることもあるでしょう。
でも、友達と自分では、仕事に求めているものや生活上の条件が違います。
友達にとって給料が最優先でも、自分は勤務地のほうが重要かもしれません。
就活では、「一般的にいい会社」を探すだけではなく、自分にとって何が大切なのかを考えることが必要です。
ただし、「自分に合いそう」という感覚だけで、労働条件や会社の情報を確認しなくてよいわけではありません。自分の価値観と客観的な情報の両方を見ることが大切です。
会社を選ぶ前に「希望する平日」を考えてみる
やりたい仕事がわからない人は、「どのような平日を送りたいか」を考えてみる方法があります。
何時ごろ起きたい?どのくらいの通勤時間なら続けられそう?何時ごろ仕事を終えたい?仕事のあとに何をしたい?一人で暮らしたい?どの地域に住みたい?
例えば、「できれば18時ごろ仕事が終わり、帰りに運動をして、家で夕食を食べたい」と思うなら、恒常的に遅くまで働く環境は、自分の希望とは合わないかもしれません。
「20代のうちは仕事を通じてさまざまな経験を積みたい」と思うなら、一定の忙しさがあっても、挑戦できる環境に魅力を感じるかもしれません。
ただし、実際の終業時刻や仕事量は、時期や配属先によって変わることがあります。「毎日必ずこの時刻に帰れる」と考えるのではなく、自分が希望する生活と、どの程度の変動までなら受け入れられるかを考えてみましょう。
仕事そのものから考えにくいなら、生活から逆算して会社を見る方法もあります。
就活の軸は途中で変わってもいい
就活を始めた頃は「給料が一番大事」と思っていた。でも、説明会へ行くうちに、「どのような人たちと、どのような体制で働くかのほうが大切かもしれない」と感じる。
最初は大手企業しか見ていなかったけれど、仕事体験などに参加したら、規模の小さな会社にも魅力を感じた。
そんな変化があっても構いません。
就活の軸は、最初から完成しているものではありません。
企業を知り、働いている人の話を聞き、自分の反応を確かめながら変わっていくことがあります。
「一度決めた軸を守ること」よりも、新しく得た情報や経験を踏まえて、自分の考えを見直すことが大切です。
ただし、短時間の説明会や一人の社員との会話だけで、その会社全体の雰囲気を判断することはできません。一つの印象だけで決めず、複数の情報を確認しましょう。
小さな一歩から始めてみましょう
「やりたい仕事がないから会社を選べない」と感じているなら、今日は仕事内容だけではなく、「どのような生活を送りたいか」から考えてみてください。
スマホのメモに、まず5つだけ書きます。
「希望する勤務地」
「希望する休日の取り方」
「仕事を終えたい時間の目安」
「仕事以外で続けたいこと」
「生活するうえで大切にしたいこと」
例えば、「東京」「土日休み」「19時ごろ」「旅行」「一人で過ごす時間」でも構いません。
次に、それぞれについて「なぜ?」と一度だけ考えてみます。
「土日休みがいい。友達や家族と予定を合わせやすいから」
「東京がいい。関心のある場所や活動へ行きやすいから」
「19時ごろには終えたい。仕事以外の時間も持ちたいから」
すると、単なる条件だったものの奥から、自分が大切にしたい生活が少し見えてきます。
そのうえで、求人情報を見るときには、給料の内訳、固定残業代の有無、年間休日と有給休暇の違い、実際の残業時間、勤務地と転勤の範囲、リモートワークの利用条件などを確認してみてください。わかりにくい場合は、大学のキャリアセンターなどへ相談する方法もあります。
就活では、「夢」や「やりたいこと」がないと会社を選べないように感じることがあります。でも、仕事は人生を構成する重要な部分であると同時に、生活の中の一部分でもあります。
「何の仕事がしたい?」がわからなければ、「どのような毎日を送りたい?」から考えてもいい。
給料、休日、勤務地を見ることに罪悪感を持つ必要はありません。その条件の数字や言葉だけではなく、その奥にある「自分がどのような生活を大切にしたいのか」と、実際の労働条件の両方を確認する。
そこから、自分なりの会社選びを始めてみてください。

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MeWithを運営するMinds1020Lab(マインズテントゥエンティラボ)は、「なんとなく生きづらい」「心がモヤモヤする」と感じる10代・20代に寄り添いながら、心のはたらきについて研究しているチームです。
将来のことや友人関係、自分自身の悩みなど、学生が抱えやすい不安やモヤモヤを少しでも軽くするためのヒントを発信しています。詳しくはMinds1020Lab(マインズテントゥエンティラボ)公式サイトをご確認ください。
心理学監修:横浜市立大学医学部 客員教授/中央大学文学部 教授 髙瀨堅吉
学生生活や人間関係など、若者が抱える悩みについて、心理学の視点から記事内容を監修しています。



