・大学の空きコマをうまく使えないのは珍しいことではない
・「時間がある」と思うほど、かえって何をするか決められず、時間が過ぎることがある
・心理学的には、行動の選択肢が多かったり、始めるまでの負担が大きかったりすると、行動を先延ばししやすくなることがある
・空きコマを必ずしも「有効活用する時間」と考えず、その時間の目的を1つだけ決めると使いやすくなる
空きコマがあったのに、結局スマホを見て終わっていない?
大学生になると、高校までとは違って「空きコマ」ができることがあります。2限が終わって、次の授業は4限。「よし、この90分で課題をやろう」と思っていたはずなのに、とりあえずスマホを開いて、SNSを見て、友達と少し話して、コンビニへ行って……気づいたら次の授業まであと15分。「結局何もできなかった」と後悔した経験はありませんか?
後期が始まり、新しい時間割になると、「この空きコマは勉強に使おう」「前期より時間を有効に使おう」と考える人もいるかもしれません。でも、実際に空きコマになると、なぜか動けない。やることはたくさんあるのに、何から始めるか決められない。そんな状態になることがあります。
90分あるのに何もできないのは「時間がない」からではない
空きコマをうまく使えなかったとき、「せっかく時間があったのに」と思いますよね。90分もあれば、レポートを進めたり、テスト勉強をしたり、本を読んだりできそうです。
でも、ここには少し落とし穴があります。「90分もある」と思うからこそ、やりたいことの候補が増えてしまうのです。英語の課題をやろうかな。レポートも進めたい。就活サイトも見なきゃ。メールも返したい。そういえば来週の発表も準備しないと。何か食べたいし、少し休みたい。
やることが一つなら始めやすくても、候補が5つ、6つと増えると、「何からやろう」という判断が必要になります。その判断をしている間に、手軽に始められるスマホへ流れてしまうことがあります。
心理学では「何をするか決める」ことにも負担があると考えられている
私たちは行動するとき、「実際にやること」だけに負担を感じているわけではありません。その前に、何をするか、どこでやるか、どのくらいやるかといった判断もしています。
例えば、「空きコマに勉強しよう」だけでは、実際の行動はまだ決まっていません。図書館へ行くのか、学生ラウンジにいるのか。何の科目をやるのか。課題なのか復習なのか。どこまで進めるのか。細かく考えると、決めなければならないことがたくさんあります。
一方でスマホは、ポケットから出して画面を開くだけです。SNSや動画なら、次に見る内容が自動的に表示されることも多く、「何をするか」を深く考えなくても始められます。
つまり、やりたいことがないからスマホを触っているのではなく、そのとき最も始めやすい行動がスマホを見ることになっている可能性があります。
「空きコマを有効活用しなきゃ」が逆にプレッシャーになる
空きコマがあると、「この時間を無駄にしてはいけない」と思うこともあります。大学生の時間術などを見ると、「空きコマで課題を終わらせる」「資格の勉強をする」「就活を進める」といった方法が紹介されていることもあります。
それを見て、「自分もちゃんと使わなきゃ」と思う。でも、毎回空きコマを生産的に使わなければいけないわけではありません。
1限から授業を受けて疲れている日もあります。次の授業が大変だから、その前に休みたい日もあります。友達と話したい日もあれば、ぼーっとしたい日もあります。休憩も、大学生活を続けていくために必要な時間です。
休んだこと自体を「無駄」と考える必要はありません。気になりやすいのは、「課題をやろうと思っていたのに、なんとなく90分が終わって後悔する」という状態なのかもしれません。
空きコマの目的を3種類に分けてみる
空きコマを使いやすくするために、「空き時間=勉強時間」と決めなくても大丈夫です。むしろ、その日の状態によって、空きコマの役割を変えてみましょう。
例えば、「進める時間」「整える時間」「休む時間」の3つに分けてみます。
「進める時間」は、レポートや課題、資格の勉強などを進める空きコマ。「整える時間」は、メールを返したり、スケジュールを確認したり、プリントを整理したりする空きコマ。そして「休む時間」は、ご飯を食べたり、友達と話したり、一人でゆっくりしたりする時間です。
これは心理学的に決められた分類ではありませんが、「今日はどれにする?」と最初に決めるだけでも、なんとなく時間が過ぎる状態を減らしやすくなります。
90分全部を使おうとしなくていい
空きコマが90分あると、「90分勉強できる」と考えがちです。でも実際には、前の授業から移動したり、トイレへ行ったり、飲み物を買ったり、次の教室へ移動したりする時間も必要です。
そこで最初から「45分だけ課題をする」「30分だけ勉強する」と決めてみるのもおすすめです。残りの時間は、昼食を食べたり、友達と話したりしてもいい。空きコマ全部を生産的に使おうとするより、一部分だけ使うほうが、取りかかりやすく続けやすいことがあります。
「レポートをやる」ではなく「参考文献を1つ探す」
空きコマで動けなくなるもう一つの理由が、やることが大きすぎたり、曖昧だったりすることです。「レポートを進める」「就活をする」「テスト勉強をする」と考えていると、何から始めればよいかわからなくなることがあります。
そんなときは、90分で完了させようとせず、最初の行動を一段階小さくしてみてください。
「レポートをやる」なら、テーマの候補を考える、参考文献を1つ探す、見出しを3つ作る。「就活をする」なら、気になる企業を1社見る、インターンを1つ保存する、自己PRを100文字だけ書く。「テスト勉強をする」なら、授業資料を1回分だけ見直す。
空きコマで一つ進めば、それだけでも次に取りかかるときの負担が小さくなります。
場所を決めておくと始めやすくなる
空きコマになってから「どこに行こう」と考えていると、それだけで時間が過ぎてしまいます。そこで、目的ごとに場所を決めておく方法もあります。
課題をするときは図書館、軽い作業なら学生ラウンジ、休むならカフェ。このように自分なりの「空きコマの定位置」を作っておくと、その都度判断する回数を減らせます。
特に集中したい場合は、友達がたくさんいる場所より、一人で過ごせる場所のほうが合う人もいます。反対に、一人だとスマホを見続けてしまうなら、周りに勉強している人がいる場所のほうが集中しやすいかもしれません。
「一番集中できる場所」にこだわるのではなく、自分が取りかかりやすい場所を探してみることがポイントです。
友達と一緒の空きコマは無駄なの?
大学では、友達と空きコマが重なることもあります。「本当は課題をやりたいけど、みんなといるとなんとなく話して終わる」ということもあるでしょう。
でも、友達と話す時間をすべて「無駄」と考える必要はありません。大学生活では、人と話したり、何気ない時間を一緒に過ごしたりすることも、大切な経験の一つです。
もし課題も進めたいなら、「最初の30分だけ一緒に課題をやらない?」と提案してみてもよいでしょう。そのあとに話したり、ご飯を食べたりすれば、「課題か友達か」の二択にしなくても済みます。
空きコマは「大学にいるからできること」に使ってみる
もう一つの方法が、家ではやりにくいことを空きコマに持ってくることです。
例えば、図書館で資料を探す、教員のオフィスアワーなどを利用して質問する、キャリアセンターへ行く、大学の設備を使う、友達と課題について相談する。
家に帰ってからでもできることをすべて空きコマへ詰め込むのではなく、「大学にいる今だからできること」を優先すると、時間の使い方を決めやすくなります。
学年が上がると、就職活動に向けてキャリアセンターを利用したり、インターンについて調べたりする機会も増えてきます。「空きコマができたから、キャリアセンターを10分だけのぞいてみる」という使い方も十分です。
何もしなかった空きコマを責めなくていい
空きコマが終わったあと、「また何もしなかった」と自分を責めてしまう人もいるかもしれません。でも、一度時間を思うように使えなかったからといって、次も同じになるとは限りません。
むしろ、「なぜ今日は予定していたことができなかったんだろう?」と振り返ってみると、自分の傾向が見えてきます。
お腹が空いていた。友達といると作業に取りかかりにくかった。やることを決めていなかった。図書館まで行くのが面倒だった。前日の睡眠不足で疲れていた。
理由がわかれば、次の空きコマを少し変えられます。「自分は時間を無駄にする人」と決めつけるのではなく、「どういう条件なら取りかかりやすいか」を探してみてください。
小さな一歩から始めてみましょう
次の空きコマを完璧に使おうとする必要はありません。まず、授業が終わったときに「今日は進める・整える・休むのどれにする?」と一つ決めてみてください。
「進める」を選んだら、課題を一つ終わらせる必要はありません。レポートのタイトルを書く、資料を1ページ読む、英単語を10個確認する。それくらいで十分です。
「休む」を選んだなら、必要な休息の時間だと考えて休んでみる。それも空きコマの大切な使い方です。
空きコマを上手に使うというのは、90分間ずっと何かを頑張ることではありません。その時間をどう使うか、自分で一つ選べることのほうが大切です。
次の空きコマが始まる前に、スマホのメモへ「次の空きコマでやることを1つ」だけ書いてみてください。「図書館でレポートの参考文献を1つ探す」くらい具体的にしておくと、授業が終わったあとに迷う時間を減らせます。
空きコマは、大学生活の中にできた「余った時間」とは限りません。休んでもいいし、何かを少し進めてもいい、自分で使い方を選べる時間です。全部を有効活用しようとせず、まずは次の90分のうち30分だけ、自分で使い方を決めてみてください。

MeWithを運営するMinds1020Lab(マインズテントゥエンティラボ)は、「なんとなく生きづらい」「心がモヤモヤする」と感じる10代・20代に寄り添いながら、心のはたらきについて研究しているチームです。
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心理学監修:横浜市立大学医学部 客員教授/中央大学文学部 教授 髙瀨堅吉
学生生活や人間関係など、若者が抱える悩みについて、心理学の視点から記事内容を監修しています。


