・夏休み明けに授業へ集中できないのは「やる気がないから」とは限らない
・長期休暇中に変わった生活リズムや環境から、大学生活へ切り替えるまでには時間がかかることがある
・「90分間ずっと集中しなきゃ」と考えるより、集中する対象を小さく決めるほうが取り組みやすい
・後期の初めは、前期と同じ状態へ一気に戻そうとせず、自分なりの「授業モード」を作り直していくことが大切
後期が始まったのに、授業が全然頭に入ってこない
夏休みが終わって大学の後期がスタート。教室に座って授業を受けているのに、なぜか先生の話が頭に入ってこない。最初の10分くらいは聞いていたはずなのに、気づいたら別のことを考えている。スマホが気になって一度触ったら、そのままSNSを見てしまう。
「前期はもう少しちゃんと授業を受けていた気がするのに」と感じることはありませんか?
夏休み中は授業や課題が少なく、自分の好きな時間に起きて、自分のペースで過ごしていた。それなのに後期が始まると、決められた時間に大学へ行き、90分の授業を受けて、先生の話を聞いて、ノートを取る生活に戻ります。
頭では「大学が始まったんだから、ちゃんとしなきゃ」とわかっている。でも身体や気持ちは、まだ夏休みの延長にいるような感じがする。そんな状態になることがあります。
「集中できない=やる気がない」と決めなくていい
授業中にぼーっとしてしまうと、「自分はやる気がない」「後期もこのままダメかもしれない」と思ってしまうかもしれません。でも、集中力は気持ちだけで決まるものではありません。
睡眠、疲労、周囲の環境、授業への興味や理解度、その日の体調や予定など、さまざまな要因によって変わります。
特に夏休み明けは、生活そのものが大きく切り替わるタイミングです。
夜2時に寝て10時に起きていた人が、急に7時に起きて大学へ行けば、睡眠が不足したり眠気を感じたりすることもあります。夏休み中は自分の好きなことをしていたのに、急に決められた時間に授業を受ければ、集中が続きにくくなることもあります。
「集中できない」という結果だけを見て自分を評価するのではなく、「今は何が集中を邪魔しているんだろう?」と考えてみることが大切です。
集中力はずっと一定ではない
「集中して授業を受ける」と聞くと、90分間ずっと先生の話だけを聞いている状態をイメージするかもしれません。でも、人の注意は常に一定ではありません。周囲の音が気になったり、別の考えが浮かんだり、疲れて注意がそれたりすることがあります。
例えば、授業中に「今日のバイトは何時からだっけ?」と思い出す。そこからバイトのことを考えているうちに、数分間、先生の話を聞いていなかった。このように、意識が別のことへ向くこと自体は起こり得ます。
そこで「また集中できなかった」と考えるより、気づいたときに授業へ注意を戻せるかを意識してみてください。集中を「一度もそれないこと」ではなく、「それたことに気づき、また戻ること」と考えると、授業への向き合い方が少し変わります。
夏休み中のスマホ習慣が残っていることもある
夏休み中、スマホを見る時間が増えた人もいるかもしれません。朝起きてSNSを見る。移動中に動画を見る。夜もベッドでスマホを見る。授業がないため、日中も自由にスマホを触れます。
ところが大学が始まれば、授業中はスマホから離れ、講義に注意を向ける時間が戻ってきます。すると、通知が気になったり、「少しだけ」とSNSを開きたくなったりすることがあります。
スマホでは、短い動画や新しい投稿など、注意を引きやすい情報が次々に表示されます。そのため、スマホをすぐ確認できる状態では、授業とスマホの間で注意が揺れやすくなることがあります。
だから、「スマホを触る自分は意志が弱い」と考えるより、授業中は触りにくい環境を作ってしまうほうが取り組みやすいかもしれません。
スマホを「我慢する」のではなく見えない場所へ
授業中のスマホが気になるなら、「絶対に見ない」と我慢するだけではなく、そもそも視界に入らないようにしてみましょう。
机の上に画面を伏せて置くより、バッグの中に入れる。通知をオフにする。集中モードを使う。授業中だけSNSアプリを開きにくい設定にする。
スマホが目の前にあると、「見ない」という判断を何度もすることになります。最初からバッグへ入れてしまえば、その判断をする機会自体を減らせます。
集中するときに大切なのは、誘惑に勝ち続けることだけではなく、誘惑を意識しなくて済む環境を作ることでもあります。
90分間ずっと同じように集中しようとしなくていい
大学の授業で集中できない人ほど、「最初から最後まで、同じ集中力でちゃんと聞かなきゃ」と考えていることがあります。でも、90分間ずっと同じ強さで集中しようとすると、少し意識がそれただけで「もうダメだ」と感じてしまいます。
そこで、授業ごとに小さな目標を一つ決めてみてください。「今日は重要そうなキーワードを3つメモする」「先生が何を一番伝えたいのかを一つ見つける」「わからないところを一つチェックする」などです。
目的があると、ただ90分座っているよりも、何に注意を向ければよいかがわかりやすくなります。もちろん、授業内容を理解することは大切ですが、最初からすべてを完璧に理解しようとするのではなく、授業中に押さえるポイントを決めてみるということです。
ノートをきれいに取ることが集中ではない
授業中にノートを取っていると、「ちゃんと授業を受けている」という感覚になります。でも、先生のスライドをそのまま書き写すことに集中して、内容をほとんど理解していなかったということもあります。
ノートは、きれいな完成品を作るためだけのものではなく、授業内容を整理し、後から自分が思い出すためのものです。
全部を書き写すのではなく、「ここは重要そう」「これはわからない」「前回とつながっている」と、自分の言葉を少し入れてみる。それだけでも、受け身で聞く状態から少し変わります。
例えば、「?」をつけるだけでも構いません。わからない場所が明確になれば、授業後にそこだけ調べたり、教員へ質問したりできます。
座る場所を変えるだけで集中しやすくなることもある
いつも後ろの席に座っていてスマホを見てしまうなら、一度前のほうへ座ってみるのも方法の一つです。友達の隣だと話してしまうなら、その授業だけ少し離れて座ってみてもよいでしょう。
逆に、前に座ると緊張して授業どころではなくなる人なら、無理に最前列へ行く必要はありません。
大切なのは「集中できる学生は前に座る」と決めることではなく、自分にとって授業を受けやすい場所を探すことです。
同じ授業でも、席を変えるだけで、先生の声の聞こえ方や周囲から入ってくる情報が変わります。「集中力を上げる」ことが難しければ、まず環境を変えてみるのも一つの方法です。
1限だけ集中できないなら生活リズムが関係しているかもしれない
「授業に集中できない」とひとくくりにせず、どの授業で集中できないのかを見てみることも大切です。
1限は毎回眠いけれど、3限なら集中できる。昼食後の授業だけ眠くなる。興味のある授業ではスマホを触らない。特定の授業だけ内容についていけない。
このように細かく見ていくと、自分の集中力そのものではなく、時間帯、睡眠、授業への興味や理解度、教室の環境などが関係していることもあります。
例えば、1限だけ眠いなら、「もっと集中しよう」と頑張るだけではなく、睡眠時間を確保しながら、起きる時刻を少しずつ授業日に近づける、朝に光を浴びる、朝食を取るなど、生活リズムを整えることが役立つかもしれません。
生活リズムは一晩で大きく変えようとせず、可能な範囲で少しずつ調整していきましょう。
「授業後5分」を使うと次の授業が少し楽になる
授業に集中できないと、復習までしっかりやろうと思うのは大変です。そこで、授業が終わった直後の5分だけ使ってみる方法があります。
今日何の話だったかを一言で書く。重要そうだった言葉を3つ残す。わからなかったところに印をつける。それだけで構いません。
授業内容を完璧にまとめる必要はありません。「今日何を扱ったのか」が後からわかる状態にしておくだけでも、試験前に一から見直す負担を減らせます。
特に後期の最初は、この小さな振り返りを使って、「授業を受ける→少し整理する」という流れを作ることが、勉強モードへ戻るきっかけになります。
前期の自分と比べすぎなくていい
夏休み明けには、「前期はもっとちゃんとしていたのに」と感じることがあります。でも、前期の終盤は、数か月大学へ通ったあとの自分です。一方、後期が始まったばかりの自分は、長い休みから戻ってきた直後です。
条件が違うのに同じ集中力を求めると、「できなくなった」と感じやすくなります。
後期最初の数週間は、前期の状態へ一気に戻すというより、もう一度大学生活のリズムを作る期間と考えてみてください。
授業へ行く。スマホをバッグへ入れる。今日のポイントを一つ見つける。授業後に一言メモする。まずはその程度から始めてもよいでしょう。
ただし、集中できない状態や強い眠気が長く続く、授業だけでなく日常生活にも支障が出ている、気分の落ち込みや不安、睡眠や食欲の変化なども続いている場合は、単なる休み明けの問題とは限りません。大学の学生相談室や保健センター、医療機関などへ相談することも考えてください。
小さな一歩から始めてみましょう
後期が始まったのに授業へ集中できないなら、「明日から90分間ずっと集中する」という目標を立てなくても大丈夫です。次の授業で、一つだけルールを決めてみてください。
「授業が始まったらスマホをバッグに入れる」
「重要だと思った言葉を3つだけメモする」
「授業が終わったら今日の内容を一文だけ書く」
この中から一つだけでも構いません。
集中力は、スイッチを入れた瞬間に夏休み前の状態へ戻るものではありません。後期の初めは、生活リズムも授業の受け方も、少しずつ作り直していく時期です。
そして、授業中に別のことを考えてしまっても、その時点でその日の授業が失敗になるわけではありません。「あ、聞いていなかった」と気づいたら、そこからまた先生の話へ注意を戻せばよいのです。
90分間一度も注意をそらさないことより、注意がそれたときに何度でも戻ることを目標にしてみてください。
後期最初の授業で必要なのは、完璧なスタートではありません。まず次の授業で、自分が集中しやすくなる工夫を一つ試してみる。そこから少しずつ、自分の「授業モード」を作り直していきましょう。

MeWithを運営するMinds1020Lab(マインズテントゥエンティラボ)は、「なんとなく生きづらい」「心がモヤモヤする」と感じる10代・20代に寄り添いながら、心のはたらきについて研究しているチームです。
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心理学監修:横浜市立大学医学部 客員教授/中央大学文学部 教授 髙瀨堅吉
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