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親の期待に応えなきゃと思ってしまう大学生へ|自分の人生なのに親の意見が気になるときの考え方

隣で父に何かを言われ、耳を塞いで聞かないようにしている少年 ライフスタイル

・大学生になると、進路や就職など、自分で大きな選択をする機会が増えていく
・親から強く言われていなくても、「期待に応えなきゃ」と感じることがある
・親の意見を大切にすることと、親の希望どおりに選択することは同じではない
・「親か自分か」の二択にせず、親の意見を聞きながら、自分の気持ちや現実的な条件も整理していくことが大切

「自分の人生なんだから好きにすればいい」と言われても、親のことが気になる

大学生になって、少しずつ自分で決めることが増えてきた。どんな授業を取るか、どんなアルバイトをするか、誰と付き合うか、どこへ旅行するか。そして学年が上がれば、就活や卒業後の進路について考えるようになります。

「自分の人生なんだから、自分で決めればいい」
そう言われることもあります。
でも、実際にはそんなに簡単ではないこともあります。

自分には興味のある業界がある。でも、親は「安定した会社のほうがいい」と言っている。地元を離れて働いてみたい。でも、親からは「できれば近くにいてほしい」と言われている。大学院へ行きたいけれど、「早く就職したほうがいいんじゃない?」と言われた。

親の意見を無視したいわけではない。でも、自分の人生でもある。
その間で迷ってしまう大学生もいます。

親から何も言われていないのに「期待」を感じることもある

親の期待というと、「この会社に入りなさい」「この仕事をしなさい」と直接言われるイメージがあるかもしれません。

でも実際には、もっと曖昧な形で感じることもあります。
「せっかく大学まで行ったんだからね」
「安定した会社に入れたら安心だね」
「○○ちゃんは大手に決まったらしいよ」
「地元に戻ってきてくれたらうれしいな」
一つひとつは何気ない言葉かもしれません。でも、何度も聞いているうちに、「親はこうしてほしいんだろうな」と感じるようになることがあります。
そして、いつの間にか「自分はどうしたい?」より先に、「親はどう思う?」を考えるようになっていることがあります。

ただし、自分が感じ取った期待と、親が実際に望んでいることが、必ずしも同じとは限りません。話してみると、親は一つの意見を伝えただけで、最終的には本人に任せたいと思っている場合もあります。

親の期待に応えたいと思うこと自体は悪くない

「親の意見に左右される自分は、自立できていないのかな」と思う人もいるかもしれません。
でも、大切な人から認められたい、喜んでもらいたいと思うこと自体は不自然ではありません。

大学まで通わせてもらった。生活を支えてもらった。応援してもらった。そんな経験があれば、「親を安心させたい」と思うこともあるでしょう。
だから、親の期待を気にする自分を否定する必要はありません。

ただ、親の期待を優先することが続くうちに、自分の気持ちや希望が見えにくくなっているなら、一度整理してみることが大切です。

「親をがっかりさせたくない」が選択の基準になっていない?

進路を考えるとき、一度自分に聞いてみてほしいことがあります。
「私はこの選択のどこに魅力を感じているのだろう。親をがっかりさせたくないという気持ちは、どのくらい影響しているだろう」

例えば、大手企業を志望している。自分も大きな会社の仕事や環境に魅力を感じているのか。それとも、親が安心しそうだという理由が大きいのか。
地元で就職しようとしている。自分も地元で暮らしたいのか。それとも、親を心配させたくないという気持ちが強いのか。

もちろん、理由は一つでなくても構いません。「自分も大手企業に興味があるし、親も安心するから」ということもあります。「地元を離れたい気持ちもあるけれど、家族の事情も気になる」ということもあるでしょう。

大切なのは、自分の選択に、自分や親の希望、経済面、家族の事情などが、どのように関係しているのかを一度確認してみることです。

心理学で考える「自立性」とは、誰にも頼らないことではない

「自立する」というと、親の意見を聞かず、すべて自分一人で決められることだと思うかもしれません。

心理学では、自分の行動を自分自身が納得して選んでいるという感覚を、「自立性」と呼ぶことがあります。ここでいう自立性は、他者から完全に独立することや、誰の助けも借りないことと同じではありません。

親に相談してもいい。友達に相談してもいい。大学の先生やキャリアセンターに意見を聞いてもいい。
いろいろな人の意見や、経済面などの現実的な条件を踏まえたうえで、「自分はなぜこの道を選ぶのか」を考え、できる範囲で納得して選ぶ。
それも、自分の人生を選ぶことの一つです。

「親の意見」と「自分の気持ち」を一度分けて書いてみる

親との関係で迷っていると、頭の中でいろいろな声が混ざってしまいます。
「安定した会社のほうがいい」

これは自分もそう思っているのか、親から何度も言われたことで強く意識するようになったのか。
「地元にいたほうが安心」
自分が地元にいたいのか、親が安心するからそうしたいのか。

わからなくなったら、紙やスマホのメモを二つに分けてみてください。
「親が望んでいそうなこと」
「自分が今考えていること」

例えば、親は「大手企業に入ってほしい」。自分は「会社の規模より仕事内容が気になる」。親は「地元で働いてほしい」。自分は「一度、別の地域で暮らしてみたい」。
このように分けるだけでも、自分の考えが少し見えやすくなることがあります。

ただし、親の希望を自分が推測しているだけの場合もあります。また、自分の中にも複数の気持ちがあるかもしれません。「地元を離れたいけれど、家族の近くにいたい気持ちもある」のように、迷いや矛盾もそのまま書いて構いません。

親と意見が違う=親を大切にしていない、ではない

親と違う道を選ぼうとすると、罪悪感を感じることがあります。
「ここまで育ててもらったのに」
「心配をかけるかもしれない」
「親不孝なのかな」

でも、親を大切に思うことと、親と同じ意見を持つことは別です。
感謝していても違う仕事を選ぶことはあります。親を大切に思っていても、離れた場所で暮らしたいことはあります。親の意見を理解したうえで、別の選択をすることもあります。
意見が違うことは、それだけで関係を否定することにはなりません。

一方で、学費や生活費の支援、家族の介護など、本人の希望だけでは決められない現実的な事情があることもあります。その場合は、「自分の人生だから好きに決める」「親の言うとおりにする」という二択ではなく、利用できる制度や支援も含めて考える必要があります。

「わかってもらう」ことをゴールにしすぎない

自分のやりたいことを親に話したとき、すぐに理解してもらえるとは限りません。
例えば、「海外で働きたい」と伝えたら、「危なくない?」「日本で働けばいいじゃない」と言われるかもしれません。
そこで、「どうしてわかってくれないの?」と感じることもあるでしょう。

でも、親には親の価値観があります。育ってきた時代も、経験してきた仕事も、自分とは違います。
一度の会話で完全に理解し合うことを目指すより、「自分は何に関心があり、なぜそう考えているのか」という情報を少しずつ伝えるほうが、話し合いやすい場合もあります。

また、丁寧に説明しても意見が一致しないことはあります。「理解してもらうこと」と「賛成してもらうこと」も同じではありません。

親が心配している「中身」を聞いてみる

親から反対されたときは、「反対された」という結果だけではなく、「何を心配しているのか」を聞いてみる方法もあります。
「なんでダメなの?」ではなく、「何が一番心配?」と聞いてみる。

例えば、海外就職に反対しているように見えて、実際には治安や生活面が心配なのかもしれません。ベンチャー企業への就職に反対しているように見えて、収入や雇用の安定性、会社の将来性を心配しているのかもしれません。

心配の中身がわかれば、「その点については、このように調べている」「こういう準備を考えている」と説明できることもあります。

「賛成か反対か」だけで話すより、お互いが何を大切にし、何を心配しているのかを具体的にしたほうが、話し合いやすくなる場合があります。

就活では「親が知っている会社」だけが正解ではない

就活が始まると、親との価値観の違いを感じる学生もいます。
親から「その会社、聞いたことがないけれど大丈夫?」「もっと有名なところを受けないの?」と言われることもあるかもしれません。

でも、世の中には消費者にはあまり知られていなくても、特定の業界で重要な役割を担っている会社がたくさんあります。
親が知らない会社だから、問題のある会社だとは限りません。反対に、有名な会社だから、自分に合う会社だとも限りません。

自分が興味を持っているなら、仕事内容や事業内容だけでなく、雇用条件、勤務地、働き方、企業の情報などを公式資料や複数の情報源から調べたうえで、「自分はここに、こういう魅力を感じている」と説明してみてもよいでしょう。

会社を選ぶときは、知名度だけではなく、自分が何を大切にしたいか、生活や働き方の条件に合っているかも重要です。

実家暮らしだからこそ距離が難しいこともある

大学生でも実家で暮らしていると、親との距離を取りにくいと感じることがあります。
帰宅時間を聞かれる。誰と遊ぶのか聞かれる。大学の予定を聞かれる。就活の状況を毎日のように聞かれる。
親としては心配しているつもりでも、大学生側からすると「もう自分で決めたい」と感じることがあります。

そんなときは、安全に話し合える関係であれば、いきなり「干渉しないで」と拒絶するのではなく、自分がどこまでなら話せるかを伝えてみてもよいかもしれません。

「就活のことは進展があったら自分から話すので、毎日は聞かないでほしい」
「帰宅が遅くなるときは連絡する」
「進路を決める前には相談するけれど、まず自分でも考える時間がほしい」
など、自分なりの境界線を少しずつ作っていく方法もあります。

ただし、親に意見を伝えることで強く責められる、脅される、暴力を受ける、生活や学業に必要な支援を一方的に奪われるおそれがある場合は、一人で話し合おうとしないでください。大学の学生相談室や教職員、信頼できる親族、地域の相談機関などに相談し、安全を優先することが大切です。

「親の人生」と「自分の人生」を分けて考えてみる

親は、自分より長く生きています。だからこそ、経験からアドバイスしてくれることがあります。その意見が役立つこともあるでしょう。

一方で、これからその選択を実際に経験するのは自分です。
その会社へ通うのも自分。選んだ仕事をするのも自分。その地域で暮らすのも自分です。

だから、「親の意見を聞くこと」と「自分の意思を持つこと」は両立できます。
親の意見をすべて拒否する必要もなければ、すべてそのまま受け入れる必要もありません。親の意見、自分の希望、経済面や家族の事情などを踏まえて、自分なりの選択を考えることができます。

小さな一歩から始めてみましょう

親の期待が気になって自分の気持ちがわからなくなっているなら、すぐに親と話し合ったり、大きな結論を出したりする必要はありません。

まず一人で、スマホのメモに二つの項目を作ってみてください。
「親が望んでいそうなこと」
「自分が今考えていること」

例えば、「親は安定した会社に入ってほしいと思っていそう」「自分は仕事内容に関心を持てる会社で働いてみたい」。「親は地元にいてほしいと思っていそう」「自分は一度、違う地域で暮らしてみたい」。

すぐに答えが出なくても構いません。「自分が今考えていること」の欄が空白でも大丈夫です。「まだわからない」「どちらにもよい点がある」と書いても構いません。

さらに必要であれば、「現実的に確認すること」という欄を加えてみてもよいでしょう。学費や生活費、奨学金、勤務地、家族の事情など、気持ちだけでは決められない条件を整理できます。

大切なのは、これまで一つになっていた「親の希望」「自分の気持ち」「現実的な条件」を、一度分けて見てみることです。
親を大切にすることと、自分の人生を大切にすることは、必ずしもどちらか一つしか選べないものではありません。

親の話を聞きながら、自分の気持ちにも目を向ける。そして意見が違ったときには、「どちらが正しい?」だけではなく、「自分は何を大切にして、どの選択なら納得して引き受けられそうか」と考えてみる。

大学生の時期には、親との関係が、「親に多くを決めてもらう関係」から、互いの考えを伝え合う関係へ、少しずつ変化していくことがあります。ただし、その変化の仕方や時期は、家庭の文化や事情によって異なります。

今日すぐに大きな決断をしなくても大丈夫です。まずは、「これは親が望んでいそうなことかな」「自分は今、どう考えているのかな」と一つだけ分けてみる。そこから、自分なりに納得できる選択を考え始めてみてください。

スマホに何かを打ち込んでいる女性の手元

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心理学監修:横浜市立大学医学部 客員教授/中央大学文学部 教授 髙瀨堅吉
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